
2010年3月期末の財務諸表より、貸付金/預金など金融商品の時価開示が求められ、多くの金融機関がその対応に慌ただしく着手した。そんな中、IFRS(国際会計基準)の時価算定方式により近く、高度な時価算出方式といわれる「キャッシュフロー対応方式」にいち早く対応し、開示を成し遂げた銀行がある。その代表的な一行が岐阜に拠点を構える十六銀行様だ。
収益管理システムを構築した日立製作所に相談し、採用したのが日立東日本ソリューションズの提供する金融機関向け時価会計対応パッケージであった※1。「キャッシュフロー対応方式」はもちろん、「割引率対応方式」もサポートしており、金融商品ごとの特性に見合った時価を算出できる。新たなスタンダードになると十六銀行様では期待している。
※1:日立製作所のリスク管理パッケージ(NETALM)のオプション機能として共同開発。

【写真左】リスク統括部 リスク管理統括グループ 課長 鷲見 正人 氏
【写真右】リスク統括部 リスク管理統括グループ 課長代理 仲山 英暁 氏

鷲見氏
十六銀行様はその前身を第十六国立銀行とし、創業は1877(明治10)年。岐阜県と愛知県を主な営業基盤とし、店舗数は147店(2010年3月現在)。
--「地元の岐阜県と愛知県を結ぶ銀行です。国内のほか、地元企業の海外進出に対応するため、上海と香港にも駐在員事務所を設けています」
と、同行 リスク統括部 リスク管理統括グループ 課長 鷲見 正人 氏は説明する。
中国のみならず、東南アジアへの進出を支援するため、タイのメガバンクの一つ、カシコン銀行とも提携した。岐阜には名高い美濃焼があり、その技術を活用した「クールアイランドタイル」を外壁タイルに使用した環境重視の店舗づくりも進めている。強烈な太陽光を効率よく反射して、暑さを軽減するタイルだ。
--「何しろ、多治見市など岐阜は日本一暑い地域ですから」と、鷲見氏は苦笑する。
この岐阜県岐阜市に本店を置き、東海地区NO.1の銀行を目指して、130年以上の歴史を刻んできた。

2008(平成20)年3月に企業会計基準が変更され、上場企業は預金・貸付金・借入金など金融商品全体の時価の開示を求められるようになった。その開始が、2010年3月31日以降終了する事業年度末の財務諸表からである。
この時価会計の開示変更への対応が具体化したのは、2008年の暮れであった。
--「システムへの組み込みが不可欠になるため、いくつかのベンダーがセミナーを開始するようになりました。当行も、そろそろ対応が必要かと思い、日立製作所に相談をしました」と、同 課長代理 仲山 英暁 氏は振り返る。
同行は日立製作所に収益管理システムなどの構築や運用を依頼しており、これらは時価会計システムに関連する。日立製作所のきめ細かな対応には深い信頼感を持っていた上に、次期ALMのシステム構築も進めていた。このこともあり2009年4月ごろから、時価会計システムに求められる要件整理を、日立製作所と相談しながら詰めていった。
時価算出の方式はいくつかあり、十六銀行様では監査法人などが主催するセミナーなどで推奨されていた「キャッシュフロー対応方式」に強い関心を持った。これは、信用リスクを将来キャッシュフローから控除したうえで、リスクフリーレートで割り引いて時価を算出する方式だ。明細ごとの保全状況を加味することが可能で高精度な算出ができるが、システム的にはハードルが高い。

--「キャッシュフロー対応方式の最大の利点はIFRSの時価算定方式により近いことです。近い将来IFRSがスタンダードになることから、準備の必要性を感じました。」と、仲山氏は強調する。
一方、時価算出の方式には「割引率対応方式」もある。これは約定どおりのキャッシュフローに対し、デフォルト率・保全率等を加味した割引レートを適用し、時価を算出する方式だ。
同行では「キャッシュフロー対応方式」を理想とするものの、他行の動向も無視できない。
--「そこで、日立製作所には両方に対応する仕組みを依頼しました」と、仲山氏は語る。
ここで提案されたのが、日立製作所と日立東日本ソリューションズの提供する金融機関向け時価会計対応パッケージであった。

日立製作所と日立東日本ソリューションズが共同で開発した金融機関向け時価会計対応パッケージは時価会計算出のために「キャッシュフロー対応方式」や「割引率対応方式」、およびこれらから派生する「新規取扱レート方式」など、さまざまな算定方式に対応している。
これらの方式は科目毎に選択可能であり、さらにシミュレーション用に複数パターンを保持しておくことが可能である。
さらに、十六銀行様の要望に応じて機能強化も施し、より幅広いニーズに対応するパッケージに改良した。例えば、明細別のキャッシュフロー及び時価の算出をサポートし、お客様のデータ検証負荷を大幅に削減することを実現した。
2009(平成21)年4月から9月まで要件定義にあて、この年末まで開発。翌2010(平成22)年1月からテストに入った。
--「正直なところ、いろんなベンダーが提案に来ました。でも、日立を信頼していました。」と、仲山氏はほほ笑む。

--「一つの時価算定方式に決め打ちする自信はなく、無理をいって他の方式への対応も依頼しました。でも、これで救われたこともあります」と、仲山氏は打ち明ける。
監査法人を交え、金融商品毎の時価算定方法を議論したときに、「キャッシュフロー対応方式」では馴染まない商品があったため、「割引率対応方式」での対応に急遽切り替えたのだ。
様々な時価算定方式に対応できる時価会計パッケージの柔軟性がいかんなく発揮された場面である。
2010(平成22)年1月からのテストもほぼ問題なく終わり、十六銀行様では時価算定に関する文書化に入る。
--「システムには安心していましたから、むしろこちらの方が大変でした」と、仲山氏は振り返る。
その文書化も3月には終わり、4月から2009年度の決算に入った。
--「本番稼働となったわけですが、まったく問題なく算出できています。日立のパッケージを選択して正解でした。大変満足しています」と、鷲見氏はパッケージの優れた機能を認める。

--「私どものような地方銀行では人でもコストでも、かけることのできる限界というものがあります。何ごともメガバンクのようにはできません。外部の信頼できるパートナーの力はプロジェクト成功に大きく影響します。今回は、日立グループの総力で見事に成功することができ、非常に満足しています」
と、鷲見氏は今回のプロジェクトを振り返る。
--「今後はIFRSも控えています。システム回りにとどまらず、よりよい会計システムへのアドバイス等のコンサルティングからお願いできればと思います」と、仲山氏も今後の期待を語る。
さらに、同行で気にしているのが、今後の時価開示の標準となる方式だ。実際多くの銀行が「割引率対応方式」または「新規取扱レート方式」を採用しており、キャッシュフロー対応方式は数えるほどしかない。
--「キャッシュフロー対応方式こそベストな時価算定方法と信じています。一日も早くこのルールを広げて、スタンダードにして欲しいと思います。日立グループには、ぜひ努力を重ねて欲しいと思います」と、仲山氏も鷲見氏も強く要求する。
これもあって、日立製作所も日立東日本ソリューションズでも、一層の拡販に力を入れている。

| 社名 | 株式会社十六銀行 |
|---|---|
| 設立 | 1877(明治10)年10月 |
| 本社 | 〒500-8516 岐阜市神田町8丁目26番地 |
| 頭取 | 堀江 博海 |
| 従業員数 | 3,048人(連結 2010年3月末) |

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